＜アニメ映画＞ 雲のむこう、約束の場所 監督：新海 誠

観に行ってきました新海誠さんの新作！
では、あらすじから。舞台は日本が南北に分断されたもう一つの戦後の世界。北海道はユニオンに支配され主人公達のいる青森は米軍によって統治されています。
中学生である主人公藤沢ヒロキと白川タクヤは二つのものに憧れていました。津軽海峡を走る国境線の向こう、ユニオン占領下の北海道に建設された謎の巨大な塔、そして、同級生の沢渡サオリ。
いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと軍の廃品を利用して自作の飛行機を作り始める二人。そして、そんな二人を暖かく応援するサオリ。
「いつかあの塔まで飛行機で連れて行く」、二人はサオリに約束します。
しかし、中三の夏飛行機の完成間近、サユリは突然東京に転校してしまいます。言いようのない虚脱感の中でうやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別々の道を歩き始めます。
サオリの謎の病気と、謎に包まれたユニオン、そして、雲の向こうの塔。再びサオリと出会った二人は思わぬ真実に近づいていきます。
てな感じで今回もスケールがでかいんだか小さいんだかよく分からないような感じです。
自分、今回は映像美、特に風景。そして、音楽、あとは演出に重点を置いてみると決めていたのですが、そういう意味では満足のいく内容でした。この作品は喪失と再生の物語なので、失われたものつまり「青春」の描き方。そして、喪失感の表現。最後に再生するまでのプロセスの説得力が大切になってくると思います。
青春の描き方は抜群に良かったです。光あふれる映像、田舎の学校の独自の空気感。まるで夢のようでそれでいて暖かいそんな空間が構築されていました。
そして、喪失感の表現な訳ですが・・・・。
まだ付き合ってもいないのに、その子がいなくなったらすべてがどうでも良くなるような大恋愛は自分はしたことがないので実感がわかずそんなに凹むものなのか？と思ってしまい全くと言っていいほど感情移入できませんでした。表現方法が弱いのか、自分の理解能力がないのか、評価に悩むところです。
喪失感に襲われ、絶望的な心境にいるのは中学生時代との映像、色彩、光の差で表現されていて分かると言えば分かるのですが、ストーリー脚本の面で表現できていなかった感も否めないのです。
暗い映像と、主人公にナレーションでひたすら喪失感を吐露させるだけと言うのもどうかと思いますし自分的には微妙です。
そして、再生のプロセスなのですが、これは物語のメイン部分でもあるので多くを言及するとネタバレになる恐れがあるので触れるのはやめておきます。
一言だけ言わせてもらえば、作品全体においても、ストーリーの練り込みが弱くこのパートでもそれを露呈している印象を受けました。
しかし、青春（なんか連呼してると馬鹿になった気がしてきます）の描き方は本当に素晴らしく、自分はそれだけでお腹いっぱいになりました。
故に１５００円という高い代金も損した気にはなりませんでした。はじめから新海誠さんに練り込まれたシナリオを期待しては行けないのです。ほしのこえも演出と発想は素晴らしかったですがシナリオは特に練り込まれたものでなかったと思います。
映像に酔いしれ、音楽に酔いしれ、演出に酔いしれる。それでいいのです。