<レディースコミック> 死化粧師 作者:三原ミツカズ

遺体の防腐、修復、感染症の予防などをするエンバーマーのお話です。
改装した教会でエンバーマーの仕事をしている主人公、間宮心十郎。その教会の持ち主の娘である夏井アズキを軸に物語は展開していきます。
あまりなじみのない職業なので最初の方はエンバーマーを一話完結の短編を通して読者に分かりやすく伝えている感じ。
それと同時に心十郎とアズキの関係も少しずつ明らかになっていき、次第に登場人物の背景も見えてきます。
このままさらっとした乗りがつづくのかと思いきや、物語は途中から主人公の過去の話に移ります。
母が病気で床に伏せているにもかかわらずエンバーマーの仕事を第一優先にする父に反発を覚える学生時代。
母の死に目にも間に合わなかった父は、怒り興奮する心十郎に「母との約束だ」と言い、妻に自らエンバーミングを施す。その姿を見せ父は死というもの、自分のしてきた大切な仕事を息子に伝えようとする。しかし、幼い心十郎はそんな父を否定する。
その後医師を目指していた心十郎の元へ父の訃報が届く。
軍属のエンバーマーとして戦場で他人のために尽くした父は、無惨な姿でその命を終えていた。
その無惨な姿を前して心十郎は父が他人のために一体何をしてきたのか知ることとなる。
より父を知るため、愛するものにエンバーミングすることの意味。その答えを求めてエンバマーになることを決意する。


てな感じですかね。その後はアメリカへの留学での話になりテーマも深いものになっていきます。

エンバーマーは知名度の低い職業、この物語を通してその存在を知る人も多いことでしょう。
この作品で読者のエンバーマーに対してのイメージができることも大いにあり得るので書き手としての責任は重大です。さらに当然死というテーマも付随してきますし、作者は大変苦労したのではないでしょうか?
自分は死について少しでも考えるだけで凹み、耐えられなくなるのでこういったテーマに挑んでるだけでもすごいなと思ってしまいます。

様々な人達がそれぞれ死というものを受け止めていく姿を丁寧に描いてますし、各短編のラストはややあざとい感じのするところもありますが味わい深い落ちをつけています。

こういう意欲作を手にすると、漫画好きでよかったな〜としみじみ思うのであります。

死化粧師 1 (Feelコミックス)

死化粧師 1 (Feelコミックス)