背景と、文脈があっての言葉
昨日書いたように、mixiで書いたレビュー系の日記を、ちょくちょくここに転載していこうと思っている。というわけで、流れ的にデュアル文庫の「おもいでエマノン」という作品を絡めて「言葉」というものを語った日記を転載します。
以下転載↓
名言や綺麗な言葉を集めた本が一時期流行った。
桜井和寿からユリウス・カエサル、果てには羅王まで。様々な名言をひたすら書きつづった本。
いったい誰がそんな物を買っていたのか謎だが、小生ははっきり言ってあの手の書物が大嫌いだった。
言葉は文脈、人物背景、使われたその時の状況、そういった物があって初めて機能するのである。
言葉単体ではその力は発揮されない。
そんな物を読んで、何かを分かった気になったり、感動したりしている人は、ワインのコルク栓だけ集めてソムリエ気取りでいるようなものだ。
そして、そんな物を作ってる出版社はワインのコルク栓を上質なワインだと言い張ってる大間抜けだ。
しかし、そんな小生にも好きな言葉はある。
「きみを忘れない、きみは忘れない」
これは「おもいでエマノン」というSF小説の帯に描いてあるフレーズである。
エマノンというのはNONAMEの逆さ綴りで、この物語の主人公である女性の名前である。
エマノンは生命の歴史である。
エマノンは地球上に生命が生まれてから今日までのすべての記憶を保持している。
それこそ細菌のころから、ほ乳類が生まれ、人間に進化し、現在に至るまでのすべてを覚えている。
結婚し子供を生むと、その記憶が母親から娘へと受け継がれる。母親は空っぽになってしまう。
娘はすべての記憶を受け継ぎやがてエマノンとして旅に出る。
エマノンはずっとそうやって生きてきた。
旅の中で誰かと出会い、冒険したり、地球の危機と向き合ったり、一晩だけ語り合って分かれたり、そして、時には恋をして。
エマノンはその一つ一つを忘れることなく生きていく。
エマノンと出会った人達はもう二度と会うこともないし、もちろんいつかは必ず死んでしまう、しかし、ずっと生命の歴史とも言えるエマノンの記憶の中で生き続ける。
だから
「きみを忘れない、『きみは』忘れない」
なのである。
この言葉にはエマノンに出会った者たちの、エマノンとの思い出、そして、エマノンに対する思いがつまっている。
小生はこのフレーズを思い出すと、十代の頃大好きだったこの物語やエマノンに対する懐かしい感情、当時の青臭かった自分、そういったものがまぶたの裏によみがえってくるのである。
そういえば、この頃はmixiでの一人称が小生でした。おそらく乙一の小生物語に影響されたものだと思われます。痛いキャラ作りといわれればそれまでですが、まぁ、これはこれで当人は楽しくやっていました。
この日記はもう2年近く前に書いたものになります。やけに名言が好きでそればかりを探して引用し、それで何かを理解しそして、伝えたような気でいる人がいました。それに思うところがあってこの日記を書いたのを覚えています。
そんな彼もいまでは、自分の経験や思考から培われた言葉と文章で表現するようになりました。
こうやって昔の日記と書いた当時のことを振り返り、いまを比較してみると感慨深いものがありますね。
僕の書いた漫画版おもいでエマノンの感想
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